| ９３ 世の中は 常にもがもな 渚こぐ あまの小舟の 綱手かなしも （鎌倉右大臣） |
| 【パリ雑感】 第５部 パリの書道ライフ 93 漢字は中国人のもの 「木という漢字は樹木をかたどった形。木が二つで林、木が三つで森、木に人が寄り掛かる形が休む。どう、面白いでしょ？」 ヨーロッパ人の友人たちは、みんな興味津々で私の説明に聞き入っています。 その時です。中国人のクラスメートが言いました。 「でも漢字を発明したのは中国人。日本人じゃない。」 私はばつの悪い思いをしました。 全くそのとおりなのです。 日本は中国から漢字を借りているだけなのです。 ヨーロッパの人たちに漢字について得々と説明する資格は、日本人にはないのです。 このとき私は自分が日本人なのだ、ということを強烈に意識しました。 それと同時に日本人である自分が書の作品を書くときに、中国の文学である漢詩漢文だけを書いて済まされることではない、ということを痛切に感じました。 そしてそれは私が中国の呪縛から解放された瞬間でもありました。 (2012年1月9日） |
 サモトラケのニケ（ルーブル） |
