篆刻千字文

千字文は、中国古代より文字を学ぶ初歩の教科書として広く利用され、また日本においても習字の手本として古くから親しまれてきました。
言い伝えによりますと、中国の南朝、梁の武帝（４６４～５４９）は皇子たちに書を学ばせるため、宮中の学者である殷鉄石に命じて、書聖王羲之の筆跡から重複しない千の文字を集め摸写させました。
ところがそれぞれの文字に脈絡がなく、学ぶのに不便であったため、当時文章家として名高かった周興嗣に命じて、韻が合うように文を編纂させました。
周興嗣は勅命を受けて、重出字のない千の文字を、四字を一句とする２５０句の韻文に撰し、皇帝に進上しました。
周興嗣はこれを一夜にして完成させましたが、苦心のあまり白髪になってしまったと言われます。

本作はこの千字文を篆刻にしたものです。
８分角（２５㎜）の印材を用い、４文字を１顆として白文と朱文を交互に刻し全部で２５０顆を制作しました。
２０１８年４月から刻り始めましたが、その当時はまだ仕事をしながらの作業でしたので十分な時間が取れず、週末に１顆を刻するのがやっとでした。
約５年後の２０２３年２月にいったん刻り終え、上の写真のような折帖に仕立てました。
ところが改めて過去の作を見直してみると不満足なものも多いので、現在は一部を刻り直しながら二巡目の制作を続けています。

1 天地玄黄	2 宇宙洪荒	3 日月盈昃	4 辰宿列張	5 寒來暑往
6 秋收冬藏	7 閏餘成歲	8 律呂調陽	9 雲騰致雨	10 露結為霜
11 金生麗水	12 玉出崑岡	13 劍號巨闕	14 珠稱夜光	15 果珍李柰
16 菜重芥薑	17 海鹹河淡	18 鱗潛羽翔	19 龍師火帝	20 鳥官人皇
21 始制文字	22 乃服衣裳	23 推位讓國	24 有虞陶唐	25 弔民伐罪
26 周發殷湯	27 坐朝問道	28 垂拱平章	29 愛育黎首	30 臣伏戎羌
31 遐邇壹體	32 率賓歸王	33 鳴鳳在樹	34 白駒食場	35 化被草木
36 賴及萬方	37 蓋此身髮	38 四大五常	39 恭惟鞠養	40 豈敢毀傷
41　女慕貞絜	42　男效才良	43　知過必改	44　得能莫忘	45　罔談彼短
46　靡恃己長	47　信使可覆	48　器欲難量	49　墨悲絲染	50　詩讚羔羊
51　景行維賢	52　剋念作聖	53　德建名立	54　形端表正	55　空谷傳聲
56　虛堂習聽	57　禍因惡積	58　福緣善慶	59　尺璧非寶	60　寸陰是競
61　資父事君	62　曰嚴與敬	63　孝當竭力	64　忠則盡命	65　臨深履薄
66　夙興溫凊	67　似蘭斯馨	68　如松之盛	69　川流不息	70　淵澄取映
71　容止若思	72　言辭安定	73　篤初誠美	74　慎終宜令	75　榮業所基
76　籍甚無竟	77　學優登仕	78　攝職從政	79　存以甘棠	80　去而益詠
81　樂殊貴賤	82　禮別尊卑	83　上和下睦	84　夫唱婦隨	85　外受傅訓
86　入奉母儀	87　諸姑伯叔	88　猶子比兒	89　孔懷兄弟	90　同氣連枝
91　交友投分	92　切磨箴規	93　仁慈隱惻	94　造次弗離	95　節義廉退
96　顛沛匪虧	97　性靜情逸	98　心動神疲	99　守真志滿	100　逐物意移
101　堅持雅操	102　好爵自縻	103　都邑華夏	104　東西二京	105　背邙面洛
106　浮渭據涇	107　宮殿盤鬱	108　樓觀飛驚	109　圖寫禽獸	110　畫綵仙靈
111　丙舍傍啓	112　甲帳對楹	113　肆筵設席	114　鼓瑟吹笙	115　升階納陛
116　弁轉疑星	117　右通廣內	118　左達承明	119　既集墳典	120　亦聚羣英
121　杜稾鍾隸	122　漆書壁經	123　府羅將相	124　路俠槐卿	125　戸封八縣
126　家給千兵	127　高冠陪輦	128　驅轂振纓	129　世祿侈富	130　車駕肥輕
131　策功茂實	132　勒碑刻銘	133　磻溪伊尹	134　佐時阿衡	135　奄宅曲阜
136　微旦孰營	137　桓公匡合	138　濟弱扶傾	139　綺迴漢惠	140　說感武丁
141　俊乂密勿	142　多士寔寧	143　晉楚更霸	144　趙魏困橫	145　假途滅虢
146　踐土會盟	147　何遵約法	148　韓弊煩刑	149　起翦頗牧	150　用軍最精
151　宣威沙漠	152　馳譽丹青	153　九州禹跡	154　百郡秦并	155　嶽宗恆岱
156　禪主云亭	157　雁門紫塞	158　鷄田赤城	159　昆池碣石	160　鉅野洞庭
161　曠遠緜邈	162　巖岫杳冥	163　治本於農	164　務茲稼穡	165　俶載南畝
166　我藝黍稷	167　稅熟貢新	168　勸賞黜陟	169　孟軻敦素	170　史魚秉直
171　庶幾中庸	172　勞謙謹敕	173　聆音察理	174　鑑貌辨色	175　貽厥嘉猷
176　勉其祗植	177　省躬譏誡	178　寵增抗極	179　殆辱近恥恥	180　林皋幸即
181　兩疏見機	182　解組誰逼	183　索居閒處	184　沈默寂寥	185　求古尋論
186　散慮逍遙	187　欣奏累遣	188　慼謝歡招	189　渠荷的歷	190　園莽抽條
191　枇杷晚翠	192　梧桐早彫	193　陳根委翳	194　落葉飄颻	195　遊鵾獨運
196　凌摩絳霄	197　耽讀翫市	198　寓目囊箱	199　易輶攸畏	200　屬耳垣墻
201　具膳飡飯	202　適口充腸	203　飽飫烹宰	204　飢厭糟糠	205　親戚故舊
206　老少異糧	207　妾御績紡	208　侍巾帷房	209　紈扇圓潔	210　銀燭煒煌
211　晝眠夕寐	212　藍笋象床	213　絃歌酒讌	214　接盃舉觴	215　矯手頓足
216　悅豫且康	217　嫡後嗣續	218　祭祀蒸嘗	219　稽顙再拜	220　悚懼恐惶
221　牋牒簡要	222　顧答審詳	223　骸垢想浴	224　執熱願涼	225　驢騾犢特
226　駭躍超驤	227　誅斬賊盜	228　捕獲叛亡	229　布射遼丸	230　嵇琴阮嘯
231　恬筆倫紙	232　鈞巧任釣	233　釋紛利俗	234　並皆佳妙	235　毛施淑姿
236　工顰妍笑	237　年矢每催	238　曦暉朗曜	239　琁璣懸斡	240　晦魄環照
241　指薪脩祜	242　永綏吉劭	243　矩步引領	244　俯仰廊廟	245　束帶矜莊
246　徘徊瞻眺	247　孤陋寡聞	248　愚蒙等誚	249　謂語助者	250　焉哉乎也

【篆刻千字文】